がんになったら妊孕性温存療法するべき?

もし、あなたやあなたの家族ががんと診断され、それでも妊娠を望む場合は「妊孕性温存療法」のことを知っておくべきでしょう。
がんの部位によっては妊娠ができないケースもありますが、多くのケースで妊娠は可能となります。
しかし、抗がん剤治療を始める前、治療方法によってはその他の方法でも妊孕性温存療法方法を勧められる場合があるようです。
↑男性と女性の両方に言えることになります。
それでは詳しくみていきましょう。

目次

日本における妊孕性温存療法とは?

そもそも妊孕性温存療法とはいったい?
抗がん剤治療やその他の治療によって生殖能力が損なわれる可能性がある若年層の患者さんのために、将来子どもを授かるための選択肢を提供する治療法です。
これは女性のガンだけでなく男性側にも言えることです。
具体的には、卵子、精子、受精卵、卵巣組織などを採取し、凍結保存することで、将来の妊娠に利用できるようにします。

妊孕性温存療法の種類

妊孕性温存療法には、主に以下の種類があります。

  • 卵子凍結: 卵巣から卵子を採取し、凍結保存する方法です。最も一般的な方法の一つであり、ホルモン刺激法を用いて複数の卵子を同時に採取することができます。

卵子凍結は、以下の手順で行われます。

  1. ホルモン刺激: 卵巣を刺激するホルモン剤を投与し、複数の卵子を成熟させます。
  2. 卵子採取: 経膣超音波ガイド下で細い針を刺し、卵子を採取します。
  3. 卵子凍結: 採取した卵子を急速に冷却し、ガラス化法または凍結乾燥法で凍結保存します。

卵子凍結のメリット

卵子凍結には、以下のようなメリットがあります。

  • 将来子どもを授かるための選択肢を広げる: 抗がん剤治療やその他の治療によって生殖能力が損なわれる前に、若い状態の卵子を凍結しておくことで、将来子どもを授かるための選択肢を広げることができます。
  • 質の高い卵子を凍結できる: 若い女性は、年齢とともに卵子の質が低下していきます。卵子凍結は、若い状態の質の高い卵子を凍結しておくことで、妊娠率を向上させることができます。
  • キャリアプランの選択肢を広げる: 結婚や出産を先延ばしにしたい女性にとって、卵子凍結はキャリアプランの選択肢を広げる手段となります。

卵子凍結のデメリット

卵子凍結には、以下のようなデメリットもあります。

  • 費用が高い: 卵子凍結は、高額な医療費がかかります。健康保険の対象とはならないため、全額自己負担となります。
  • 妊娠が確約されるわけではない: 凍結した卵子を用いて必ず妊娠できるわけではありません。妊娠率は、卵子の質や年齢、体外受精の技術などによって左右されます。
  • 倫理的な問題: 卵子凍結は、倫理的な問題も指摘されています。余剰胚の取り扱いなど、慎重な検討が必要です。

卵子凍結の対象となる患者

卵子凍結は、以下の条件を満たす患者さんに適応されます。

  • 抗がん剤治療やその他の治療によって生殖能力が損なわれる可能性がある若年層の女性
  • 将来子どもを授かりたいと希望する女性

卵子凍結の費用

卵子凍結の費用は、施設や治療内容によって異なりますが、一般的には数十万円から数百万円程度かかります。内訳としては、以下のような項目があります。

  • ホルモン刺激剤
  • 卵子採取術
  • 凍結保存料
  • 管理料

卵子凍結を受ける際の注意点

卵子凍結を受ける際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 凍結した卵子を用いて必ず妊娠できるわけではありません。
  • 卵子凍結は、体外受精やその他の生殖補助医療と組み合わせて行う必要があります。
  • 倫理的な問題など、様々な課題があります。

胚凍結とは?

胚凍結は、体外受精や顕微授精で得られた受精卵を凍結保存しておく技術です。不妊治療において、新鮮な胚を移植するよりも妊娠率が高いことが知られており、近年広く行われています。

胚凍結には、大きく分けて以下の2種類があります。

分割胚凍結: 受精後2~3日目の分割胚を凍結する方法です。最も一般的な方法で、凍結後の生存率や妊娠率が高いのが特徴です。

胚盤胞凍結: 受精後5~6日目の胚盤胞を凍結する方法です。分割胚凍結よりも技術難易度が高いですが、凍結後の生存率や妊娠率がさらに高くなります。

胚凍結の対象となる患者

胚凍結は、以下の条件を満たす患者さんに適応されます。

  • 体外受精や顕微授精で複数の胚を培養できた場合
  • 凍結胚移植を希望する患者さん
  • 将来子どもを授かりたいと希望する患者さん

胚凍結の費用

胚凍結の費用は、施設や凍結方法によって異なりますが、一般的には数十万円程度かかります。内訳としては、以下のような項目があります。

  • 凍結保存料
  • 管理料
  • 融解料

胚凍結を受ける際の注意点

胚凍結を受ける際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 凍結した胚を用いて必ず妊娠できるわけではありません。
  • 胚凍結は、体外受精やその他の生殖補助医療と組み合わせて行う必要があります。
  • 倫理的な問題など、様々な課題があります。

胚凍結のメリット

胚凍結には、以下のようなメリットがあります。

  • 妊娠率を向上させる: 新鮮な胚を移植するよりも、凍結胚移植の方が妊娠率が高いことが知られています。
  • 体外受精の負担を軽減する: 一回の採卵で複数の胚を凍結しておけば、次の採卵を待つことなく移植することができます。
  • 将来子どもを授かるための選択肢を広げる: 将来子どもを授かりたいと希望する女性にとって、胚凍結は選択肢を広げる手段となります。

胚凍結のデメリット

胚凍結には、以下のようなデメリットもあります。

  • 費用が高い: 胚凍結は、高額な医療費がかかります。健康保険の対象とはならないため、全額自己負担となります。
  • 妊娠が確約されるわけではない: 凍結した胚を用いて必ず妊娠できるわけではありません。妊娠率は、胚の質や年齢、体外受精の技術などによって左右されます。
  • 倫理的な問題: 胚凍結は、倫理的な問題も指摘されています。余剰胚の取り扱いなど、慎重な検討が必要です。

精子凍結について

  • 精子凍結: 精巣から精子を採取し、凍結保存する方法です。比較的簡単で安全な方法です。

精子凍結は、精子を液体窒素(-196℃以下)で冷却し、半永久的に保存する技術です。主に以下の目的で利用されています。

  • 不妊治療: 精子数の少ない男性や、精子機能に問題がある男性が、将来の妊娠に向けて自身の精子を保存しておくことができます。
  • ガン治療: 抗がん剤治療などにより生殖能力が損なわれる可能性がある場合に、治療前に精子を凍結しておくことで、治療後も子孫を残すことができます。
  • その他の理由: 将来的に子供を持つことを希望する健康な男性が、様々な理由で精子を保存しておくこともできます。

手順

  1. 医療機関の選択: 精子凍結を取り扱っている医療機関は、全国に数多くあります。医師との相性や、費用、施設の設備などを考慮して選ぶことが重要です。
  2. カウンセリング: 医療機関を受診し、医師によるカウンセリングを受けます。精子凍結の目的、手順、リスク、費用などについて説明を受け、疑問点を解消します。
  3. 検査: 精液検査を行い、精子の数、運動率、形態などを調べます。
  4. 精子凍結: 自慰行為によって精子を採取し、液体窒素で凍結します。
  5. 保存: 凍結した精子は、液体窒素タンクに保存されます。

費用

精子凍結の費用は、医療機関によって異なりますが、一般的には以下のようになっています。

  • 凍結費用: 5,000円~数万円
  • 保存料: 年間5,000円~1万円程度

保存期間

精子の保存期間は、医療機関によって異なりますが、一般的には10年~50年程度とされています。

法的・倫理的な問題

精子凍結には、以下のような法的・倫理的な問題があります。

  • 凍結精子を使用した生殖の法的権利: 凍結精子を使用して子供を授かった場合、その子供の親権者や相続権などを誰が持つのか、明確な法律がありません。
  • 倫理的な問題: 将来的に、デザイナーベビーやクローン技術の開発につながるのではないかという懸念があります。

精子凍結を検討している場合は、以下の点に注意する必要があります。

  • すべての医療機関が同じ技術を持っているわけではない: 医療機関によって、精子凍結の技術や成功率に差があります。
  • 凍結精子を使用した体外受精の成功率は必ずしも100%ではない: 凍結精子を使用した体外受精の成功率は、年齢や精子の質などの様々な要因によって左右されます。
  • 心理的な負担: 精子凍結は、心理的な負担を伴う場合があります。

まとめ

妊孕性温存療法は、将来子どもを授かる希望を持つ若年層の患者さんにとって、重要な選択肢となり得る治療法だと思います。
今後、技術の進歩と社会的な理解の促進により、より多くの患者さんが利用できるようになることが期待されています。
もしあなたやあなたの家族が将来子供を考えている場合は、この方法があることを覚えておきましょう。
知っているか知っていないかで、がんと宣告された時に絶望を受けずに住むと思います。

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